灼熱の太陽にも負けない強いきらめきを放つ日本の8月の誕生石、ペリドット、サードオニキス、スピネル。古来より世界各国で愛され、それぞれが持つユニークな言い伝えを知るのも楽しい、そんな8月の誕生石について紹介します。
日本の8月の誕生石はもともとペリドットとサードオニキスの2つ。2021年12月に全国宝石卸商協同組合から発表された改訂により、新たにスピネルが加わりました。その3つの誕生石の特徴や由来を見ていきましょう。
8月の誕生石の成り立ち
1年の12ヵ月に特定の宝石を配し、自分の生まれた月の石を身につけると「幸せが訪れる」「願いが叶う」などと言われている誕生石。その起源は聖書にまでさかのぼり、旧約聖書の「エジプト記」に出てくるイスラエルの祭司長の胸当てにはめ込まれた12種類の宝石、さらには「ヨハネの黙示録」に理想郷として描かれた聖都の12 の城門の土台を飾る宝石に由来すると言われています。
今知られている誕生石のベースは、1952年にアメリカ宝石小売商組合など複数の団体によって制定されたもの。国によって違いがあり、日本ではペリドットとサードオニキスが8月の誕生石とされていましたが、2021年12月に新誕生石としてスピネルが加わり、3つとなりました。
ペリドット
新緑のように爽やかなオリーブグリーンの輝きが印象的なペリドット。古くから太陽のような力強いパワーがあると信じられており、古代エジプトでは「太陽の宝石」と呼ばれて王たちの王冠や装飾品に使われていたそう。夜の照明でも美しく輝くため、ローマ人からは「夜会のエメラルド」とも呼ばれていたという逸話も。
▼ペリドットの詳細はこちらの記事を参照
https://l-co.jp/magazine-peridot/
サードオニキス
石英(クォーツ)の結晶が集まってできたアゲート(瑪瑙・めのう)の一種であるサードオニキス。サードニクス、サードニクスアゲートと呼ばれることもあります。赤褐色の地色と白い縞模様が一番の特徴。古代ギリシャ時代や古代ローマ時代から高貴な人を中心に愛され、紋章や印章として使われたり、カメオ彫刻などにも用いられたりしてきた宝石です。
スピネル
「ほぼすべての色がある」と称されるほど、カラーバリエーションが豊富なスピネル。鮮やかなピンク、オレンジ、紫、バイオレット、ブルーなど多彩な輝きを放ち、ルビーやサファイアなどの名だたる宝石と見間違われてきたという言い伝えが多いのが特徴。2021年12月、日本の新誕生石として8月の誕生石に追加されました。
【8月の誕生石】暗い場所でも明るい色を放つ「太陽の石」ペリドット
すでに紀元前1500年には採掘されていたというペリドット。黄昏時になってからさらに輝きを放つその特徴から「太陽の石」とも称され、古代エジプト・ローマの時代から高貴な人々に珍重されてきました。そんなペリドットについて紹介します。
8月の誕生石ペリドットの特長とは
爽やかで明るいオリーブグリーンカラーのペリドット。古代エジプトの時代、紅海に浮かぶ島、セントジョンズ島で現地のエジプト人によって発見されたと言われています。一番の特長は、石に差し込んだ一筋の光がふたつの違う方向に進むほどに強い複屈折率。これにより光線量が少ない場所でも鮮やかに発色します。古代ローマでは、ロウソクのほのかな光を捉えてエメラルドのように輝くペリドットを「イブニングエメラルド(夜のエメラルド)」と呼んでいたという言い伝えも。
地中深くのマントル付近や火山岩の中から発見されますが、隕石の中から発見されたことがこともあり、その神秘性もまた魅力の宝石です。
高品質のものは緑色が強く、低品質のものはやや黄色~褐色がかっています。最高級の色はほとんどミャンマーとパキスタンから産出され、アメリカのアリゾナ州や中国の吉林省から採掘されたものは標準品質と評価されています。
ペリドットの歴史や言い伝えとは
暗闇でも光を放つその特性から、太陽のパワーを秘めた宝石として神秘的な力を持つと信じられていたというペリドット。特に太陽神を崇拝していた古代エジプトでは「太陽の石」と呼ばれ、強力な護符として王侯貴族が身にまとっていたとされています。旧約および新約聖書においても度々登場し、例えばヨハネの黙示録においては、「最後の審判」が下された後、「神の栄光に輝いていたエルサレムの城壁の土台を飾る12の宝石」の7番目として登場する事が記されています。
その美しい緑色は時にエメラルドと見間違われ、ドイツのケルン大聖堂にある200カラットのエメラルドは、実はペリドットだったといくことが後世になって正式な鑑定で判明しました。また、クレオパトラのエメラルドコレクションの中にはペリドットが混ざっていたのではというユニークな言い伝えも。
ペリドットの石言葉、石の持つパワーとは
石言葉は、優しさ・前向きな心・和愛・夫婦愛・平和・安心 など
ペリドットは「暗黒の波動を打ち砕く石」とも呼ばれ、古くから悪しきものを寄せつけない魔除けのお守りとして身につけられてきた宝石。邪悪なエネルギーをはね返して前向きに問題を解決できるよう働きかけるとされ、困難やトラブルにも動じない安定した力を与えてくれると言われています。仕事や人間関係でトラブルに直面した時などに、身につけてみてはいかがでしょうか。ペリドットの石言葉の中でも代表的な「夫婦愛」は、浮気防止という意味だけでなく、衝動的な邪な感情を抑え、夫婦の関係が上手くいくように前向きに勇気と希望が湧いてくる手助けをしてくれると言われています。夫婦円満のお守りとして身につけるのもおすすめです。
【8月の誕生石】艶めく朱色に縞模様が映える、サードオニキス
8月の誕生石で最も古い歴史を持つサードオニキス。独特な縞模様が特長的な宝石です。アゲート (瑪瑙/めのう)の一種で、時に他のアゲートと見間違われることもあるサードオニキス。その特長や見分け方についてまとめてみました。
サードオニキスの特長
サードオニキスは、赤色~オレンジ色に白色の縞模様が入った鮮やかで明るい宝石。 サードニクスと呼ばれることもあります。クォーツ(石英)の変種であるカルセドニー(玉髄)のうち、2種類のカルセドニーの結晶が集まって出来たアゲート (瑪瑙/めのう)の一種です。名前の由来は、赤や茶色を意味する「サード(sard)」と、かぎ爪・縞模様を意味する「オニキス(onyx)」を組み合わせによるものと言われており、和名は「赤縞瑪瑙(あかしまめのう)」、もしくは「紅縞瑪瑙(べにしまめのう)」です。
サードオニキスを構成するカルセドニーにはさまざまな種類があり、似通った特長を持つ宝石も多く、時に間違われてしまうことも。カルセドニーに含まれる宝石のバリエーションを以下にまとめてみました。
●アゲート (瑪瑙/めのう)
半透明で縞模様があるもの
●カーネリアン(紅玉髄/べにぎょくずい)
半透明で縞模様がなく全体が赤色のもの
●クリソプレーズ(緑玉髄/りょくぎょくずい)
不透明で緑色のもの
●ジャスパー(碧玉/へきぎょく)
不純物が多く不透明なもの
●ブラッドストーン(血石/けつせき)
碧玉のうち斑点状に赤色が混ざっているもの
アゲートの特長である縞模様が平行に現れるものをオニキスと呼び、そのうち縞目が赤色~オレンジ色と白色のものがサードオニキスになります。オレンジの色味が似ているためよくカーネリアンと間違われることがありますがこれは別の宝石。縞模様の有無で見分けることができます。
サードオニキスの歴史や言い伝えとは
サードオニキスは古くから宝石として歴史に登場しており、旧約聖書を始めとする多くの歴史書に名前があがっています。中でも有名な言い伝えは、「エルサレムの城壁」。新約聖書 「ヨハネの黙示録」には最後の審判が下った後に現れる世界の都「新エルサレム」の城壁の土台石には12個の宝石が飾られていたと記されており、そのうちのひとつにサードオニキスが使われていたと言われています。
また、サードニクスは古くから装飾品などにも用いられていたと言われており、かつて戦地に向かうローマの兵士たちが護符としてサードオニキスで作られたカメオを身につけていたり、溶けたロウに印を押すための印章として使われたりしていましたという言い伝えも。
サードオニキスの石言葉、石の持つパワーとは
石言葉は、夫婦の幸福・和合、幸せな結婚、結婚運 など
サードオニキスは夫婦円満のお守りとして人気のパワーストーン。夫婦はもちろん恋人同士や家族、友人に至るまで大切な人との絆を深めて信頼感を高めてくれることから、パートナーシップを安定させてくれる宝石と言われています。また、男女の仲を取り持ってくれる宝石としても知られており、内に秘めた気持ちを相手に伝えたいときや、夫婦仲を良好に長続きさせたいときに力を発揮してくれるとも。恋人や夫婦など大切な人との絆を深めたい、対人関係を円滑にしていい関係を築きたいと思う人にぴったりです。
また、サードオニキスは強力な保護力を持つとされており、悪意や嫉妬などをはね返して悪事に巻き込まれないように持ち主を守り、必要な人を周りに引き寄せるとも言われています。悪い人間関係から身を守りたい時、お守りとして身につけたり、家に飾ったりするのもおすすめです。
【8月の誕生石】鮮やかなカラーバリエーションを誇る新誕生石スピネル
新誕生石として新たに8月の誕生石に加わったスピネル。歴史の中にもしばしば登場する宝石ですが、そのほとんどがルビーやサファイアと間違われていたことによるものという非常に個性的な特長を持つ宝石です。詳しく見ていきましょう。
スピネルの特長
スピネルはとてもたくさんのカラーバリエーションを持つ天然石。元々は無色透明の石ですが、含有する鉄、クロム、マンガンなどの微妙な量によって赤や青、ピンク、オレンジ、褐色、緑色、黒色、など多彩な色を発色します。光の屈折率が高く、宝石にするとカットが非常に映えてきらきらと美しく輝き、その上質なきらめきから、まだ化学的な宝石鑑定が発達していない時代には赤いスピネルはルビーに、青いスピネルはサファイアに混同されてきたという歴史を持ち合わせています。
スピネルという名前は、ラテン語で棘(とげ)を意味する「Spina(スピナ)」や、ギリシャ語で火花を意味する「Spitha(スピタ)」に由来すると言われています。スピネルは先端が鋭く尖っている八面体結晶を持っており、産出される際にこの先端が棘のように見えたことから命名されたそう。和名は「尖晶石(せんしょうせき)」です。
スピネルの歴史や言い伝えとは
スピネルの歴史は、他の天然石の歴史に比べてはっきりしていないことが多くあります。その理由は先述のとおり、正しい鑑定ができるようになるまでスピネルはルビーやサファイアと混同されていたからです。1783年にフランスの科学者が結晶の面角に着目したことによりようやくその違いがわかるようになりましたが、それまでは歴史上の権威あるものですらスピネルがルビーと間違われていたという言い伝えが残っています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
▼スピネル歴史と言い伝えの詳細はこちらの記事を参照
https://l-co.jp/magazine-spinel/
スピネルの石言葉、石の持つパワーとは
石言葉は、成功、安全、挑戦、好奇心、目標達成 など
スピネルは、体内のエネルギーをやる気に変え、目標に対する思いをより強くし、達成に向けての行動や意志を引き出して自己実現へと導いてくれると言われているパワーストーン。障害や挫折を味わったとしても、やる気を引き出しモチベーションの向上を手助けしてくれるので、仕事や恋愛、または試験のお守りとしてもおすすめです。
また、頭の働きをクリアにして思考力を高めてくれる宝石とも言われています。思考を整理し、既存概念や固定概念に囚われない新しいアイデアを生み出す力を与えてくれそうです。気持ちを整え、強い精神を作り上げる力になってくれるので、心理的な負荷を沈めてくれる効果も実感できそうです。
これらの基本的な特性に加えて、さまざまな色を持つスピネルにはそれぞれのカラーによっても異なるパワーがあると言われています。その詳細もこちらの記事からぜひチェックしてみてください。
▼スピネル石言葉の詳細はこちらの記事を参照
https://l-co.jp/magazine-spinel/
8月の誕生石、ペリドット、サードオニキス、スピネルについて紹介しました。長い歴史の中で、他の宝石と混同されることもありながら圧倒的な美しさで王族などから珍重されてきた3つの宝石。歴史を感じながら身に纏うのも楽しそうですね。
■この記事のポイントのまとめ
8月の誕生石一覧
【8月の誕生石】暗い場所でも明るい色を放つ「太陽の石」ペリドット
【8月の誕生石】艶めく朱色に縞模様が映える、サードオニキス
【8月の誕生石】鮮やかなカラーバリエーションを誇る新誕生石スピネル