11月の誕生石はシトリンとトパーズ。どちらも優しい、まるでイチョウ並木のような黄色味を帯びた秋色の宝石です。似ていることから混同されやすいとも言われていますが実は全く違う個性も。そんな11月の誕生石について紹介します。
どちらも代表的なカラーが黄金色で、素人には判別することが難しいとされる11月の誕生石、シトリンとトパーズ。旧約聖書の時代からシトリンがトパーズと間違われていたという歴史もあるという、ふたつの石の特長をまとめてみました。
11月の誕生石の成り立ち
誕生石の由来には諸説あり、有名な説はふたつあります。ひとつは旧約聖書の「エジプト記」に出てくるイスラエルの祭司長の胸当てにはめ込まれた12種類の宝石が起源であるとするもの。もうひとつは、新約聖書「ヨハネの黙示録」に理想郷として描かれた聖都エルサレムの12 の城門の土台を飾る宝石が起源であるとするものです。11月の誕生石であるトパーズはこれらの説のどちらにも名が刻まれており、それが誕生石として選ばれた背景ではないかと言われています。シトリンは表立って歴史上に登場することはありませんが、トパーズと色合いが似ているため混合されてきた経緯があることから、同じ11月の誕生石として加えられたのかもしれません。そのような歴史を持つトパーズとシトリンは、アメリカ宝石小売商組合(ジュエラーズ・オブ・アメリカ)、日本の全国宝石卸商協同組合が制定した正式な11月の誕生石です。
トパーズ
先述のとおり、旧約聖書の時代から高貴な人に珍重されていた宝石であるトパーズ。黄色の印象が強い宝石ですが、実はカラーレス、オレンジ、ピンク、レッド、パープル、ブラウン、ブルーなど様々な色合いを誇るストーンです。大きくふたつの種類、フッ素を含む「Fタイプ」と水酸基を含む「OHタイプ」に分けられ、それぞれに多彩なカラーを放ちます。
▼トパーズの詳細はこちらの記事を参照
https://l-co.jp/magazine-topaz/
シトリン
クォーツ(水晶、石英)の一種で、黄色~オレンジ色に発色するものがシトリン。産出量が多く、比較的リーズナブルに手に入る宝石として知られていますが、実は市場に出回っているシトリンのほとんどがアメジストを人工的に加熱処理したもの。天然のシトリンは非常に希少ですが、それぞれ同じシトリンとして扱われている不思議な宝石です。
▼シトリンの詳細はこちらの記事を参照
https://l-co.jp/magazine-citrine/
【11月の誕生石】実はカラーバリエーションが豊富!トパーズ
熱や光の影響で色が変化するという特徴を持ち、黄金色を代表としてさまざまなカラーバリエーションが存在するトパーズ。その色や種類によって価値が大きく変わることもある宝石です。その特長や歴史を見ていきましょう。
11月の誕生石トパーズの特長とは
トパーズは、アルミニウムやケイ素などでできたケイ酸塩鉱物。水酸基(OH)とフッ素(F)が含まれており、どちらが優勢かによって色味が分かれ、OHタイプ、Fタイプに区別されます。大きな違いは、屈折率と退色性。OHタイプはより美しい輝きを放ち、褐色しないことから「インペリアルトパーズ」と呼ばれ、非常に希少価値の高いものとして扱われています。対してFタイプのトパーズは放射線処理によって様々な彩りを与えられるのが特徴で、長時間光に当てると退色する可能性があります。産出量が多く、市場にある多くのトパーズはFタイプになります。
それぞれのタイプごとに特長的なカラーを持つトパーズ、その種類をまとめてみました。
【OHタイプ】
・インペリアルトパーズ
「シェリーカラー」と呼ばれる、熟成されたシェリー酒を思わせる赤みがかったオレンジ色~黄色のトパーズ。未処理の天然石であるインペリアルトパーズの代表格とされています。
・ピンクインペリアルトパーズ
美しいピンク色に輝くトパーズ。市場に出ているものには黄色や褐色のトパーズに加熱処理を加えたものが多いとされていますが、OHタイプ、未処理のピンクトパーズは非常に高価値です。
・レッドトパーズ
透明な赤色の輝きを放つレッドトパーズ。天然のものはほとんど産出されず、美しい色合いのものは非常に少ないことからコレクター人気も高く、トパーズの中でも最も市場価値が高いと言われているカラーです。
【Rタイプ】
・ブルートパーズ
淡い水色のスカイブルー、明るくビビッドなスイスブルー、ダークなロンドンブルーなどさまざまな青系カラーを発色させたトパーズ。無色のトパーズに照射処理と加熱処理を施して作られ、ロンドンブルーが最も高価値と言われています。
・ホワイトトパーズ(カラーレストパーズ)
無色のトパーズ。ブリリアントカットが施されると、ダイヤモンドに似た輝きをもつことから、ジルコンなどとともにダイヤモンドの代用品とされていた時代もあるそう。多くのRタイプはホワイトトパーズに処理を施して色を出していると言われています。
・ミスティックトパーズ
レッドパープルとグリーンをメインカラーにした、まるでオーロラのような幻想的な色彩を楽しめるトパーズ。見た目がまるで万華鏡のようで、華やかな雰囲気が特長です。ブルートパーズとは異なる処理によってこの特殊な色が作られます。
トパーズの歴史や言い伝えとは
トパーズという名前の由来には諸説あり、サンスクリット語で火を意味する「TAPAS(タパス)」によるという説もあれば、ギリシャ語で「探し求める」を意味する「TOPAZOS(トパゾス)」を語源とする説などさまざまです。トパーズの持つ黄金の輝きにより古来より太陽に関係がある宝石とされており、その輝かしい光で災害から身を守る力があると信じられていたそう。インドでは「火の石」として崇められ、エジプトでは太陽神ラーの化身として「太陽の宝石」と呼ばれていました。インペリアルトパーズの特長である蛍光性から、闇に光をもたらす魔法の石として特別視され、お守りとしても用いられていたとも言われています。中世の裁判所では、王、裁判官など地位がある人々は、自分に優位になるように、また良好な関係が築けるようにと、細工を施したトパーズを護符として身につけていたという言い伝えも。
トパーズの石言葉、石の持つパワーとは
石言葉は、誠実・希望・友情・繁栄・潔白・知性など
トパーズは富と繁栄をもたらす「幸運の石」として知られており、成功に導く宝石として、仕事や恋愛などにおいて今の自分に必要なもの、望むものにたどり着けるようにサポートしてくれると言われています。また、直観力や洞察力を高める効果があるともされ、新しい仕事などに挑戦する時、ひらめきや新しいアイデア、良い出会いを引き寄せてくれるとも。縁結び・恋愛成就のお守りとしてもおすすめです。トパーズはその太陽のような輝きで意中の人と前向きな関係性を築き、明るい未来へ導いてくれる宝石。クリスマスプレゼントや誕生日のプレゼントに、大切な恋人や友人へトパーズのアクセサリーをプレゼントしてふたりの絆をより一層深めてみてはいかがでしょうか。
【11月の誕生石】瑞々しい柑橘類のような水晶、シトリン
フランス語で淡い黄色の実をつける果物を表す「シトロン(citron)」がその名の由来になったという、爽やかなイエローの宝石シトリン。流通量は多く、でも天然のシトリンはほとんどないという、その謎を特長とともに紐解いていきましょう。
シトリンの特長
シトリンはクォーツ(水晶、石英)の一種。本来クォーツは透明ですが、その結晶構造に含まれている成分によりさまざまな色に変化します。クォーツにごく少量の鉄分が含まれることで黄色やオレンジ色に発色したものがシトリンとなりますが、実はシトリンのほとんどはアメジストに熱が加わることでできたもの。アメジストもシトリンと同じクォーツで、鉄を発色元素に持った宝石。そのアメジストに地球のエネルギーによる自然熱が加わることで鉄イオンの状態が変化し、紫から黄色に変化したものがシトリンと呼ばれているそう。自然熱のかかり具合により、ひとつの結晶にアメジストの紫とシトリンの黄色、どちらも発色するアメトリンという宝石もあり、その魅惑的な輝きで人気を集めています。
現在では、市場に出回っているシトリンのほとんどは人工的にアメジストやその他のクォーツに加熱処理をして黄色に変化させたもの。もともと自然熱による変化で生まれる宝石であることから、それらも偽物ではなく本物のシトリンとして取り扱われています。ただし、中にはガラスや合成水晶で作られたものもあり、それらは偽物となるので購入する時は注意が必要です。天然のシトリンは非常に珍しく、あまり市場には出回らない希少石です。
シトリンは、原産地や発色の仕方によって呼び名が変わることも。代表的なものをまとめてみました。
◇ブランデーシトリン
通常のシトリンより絶妙に色が鮮やかで濃く、ハチミツのような琥珀色をしたシトリン。
◇マデイラシトリン
赤に近い、深いオレンジ色のシトリン。マディラワインの色に似ていることから名づけられたそう。
◇パルメィラシトリン
明るめのオレンジイエローのシトリン。元となるアメジストの最初の採掘地名であるパルメィラが由来。
◇バイアシトリン
パルメィラシトリンよりも更に明るいクリアイエローのシトリン。元となるアメジストの産地ブラジルのバイアが由来。
シトリンの歴史や言い伝えとは
シトリンの歴史は古く、宝飾品として最初に使われたのは紀元前4世紀の終わりから紀元前1世紀、ヘレニズム時代のギリシャだったと言われています。古代ギリシャの人々は、ロッククリスタルやシトリンに彫刻を施していたとも。「幸福の宝石」と信じられており、邪悪な考えを追い払ったり、蛇などの毒を持つ爬虫類を除いたりするお守りとして使われていたそう。病気治癒のために使われることもあり、消化を助け体の毒素を取り除くなど、さまざまな病気の治療に効果があると信じられていたと言われています。イギリスのビクトリア王朝時代にも宝石として非常に愛されており、当時のペンダントやブローチなどにもシトリンが多くあしらわれたものが残っています。また、中世ヨーロッパではシトリンはトパーズとして扱われていたという歴史も。今でもシトリンは「シトリントパーズ」と呼ばれることもあり、これはその時の名残だと言われています。
シトリンの石言葉、石の持つパワーとは
【石言葉】繁栄・幸福・成功・富・友情・初恋・希望・甘い思い出 など
黄金に輝くシトリンの代表的なパワーは、お金にまつわる運気を上げてくれるというもの。西洋では商売繁盛、東洋では財運をもたらす効果があるという伝承が残されているほど富や成功の象徴としても人気があるシトリンは、自分で商売や事業をしている方にぴったりの宝石です。貯蓄運のアップにも効果があると言われているので、浪費家の人はぜひ身につけてみてはいかがでしょうか。
また、太陽のような明るい色のシトリンは、持ち主にポジティブなパワーを与えて心を明るくするエネルギーを持つと言われ、人間関係を良好にしたり、チャレンジ精神をよりアップさせてくれたりする効果があるとも言われています。そのため恋を引き寄せ、良縁に恵まれるようになるとも言われています。
プレゼントにもふさわしいパワーを持つシトリン。金運・恋愛運アップのお守りとして、自分へのご褒美クリスマスプレゼントにしてみるのもおすすめです。
11月の誕生石、トパーズ、シトリンについて紹介しました。かつては混同されていた歴史があるほど似ているふたつの宝石ですが、それぞれに違った魅力やパワーを持ち合わせています。インスピレーションで選んで身につけてはいかがでしょうか。
■この記事のポイントのまとめ
11月の誕生石一覧
【11月の誕生石】実はカラーバリエーションが豊富!トパーズ
【11月の誕生石】瑞々しい柑橘類のような水晶、シトリン