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宝石の「和名」って?
そもそも宝石に付けられた「和名」とはどういうものなのでしょう?例えば、ダイヤモンドは別名「金剛石」と呼ばれています。このように、現在一般的に知られる名前ではなく、日本で特別に名付けられた名前のことを「和名」と言います。宝石に付けられた「和名」は多くの場合、その色や特徴を反映した言葉が選ばれ、「〇〇石」や「〇〇玉」という名前になっています。
宝石に「和名」がつけられ始めたのは、日本で鉱物学が発展しだした江戸時代から明治時代のこと。古来より日本人が持つ自然への美的感覚を元にして、宝石に日本語で名前がつけられるようになっていきました。
日本においての鉱物学
鉱物学は自然科学の一部門で、1800年頃にフランスやドイツで学問として確立されていきます。鉱物学が日本に浸透し始めたのは、江戸時代末期の幕末から。幕末では鉱山開発が盛んに行われ、その後、明治時代初期における欧米化の波と共に、ドイツ人学者などから鉱物学が伝えられました。日本人は海外から輸入した鉱物サンプルを参照しながら、日本産鉱物の研究を進めていったという歴史があります。
それらの過程の中で、海外から伝わってきた宝石名は、日本人に親しみやすいような表現に変えられていきました。それが現代でも「和名」として残っています。
宝石の「和名」 :誕生石編

ここからは早速、主な誕生石につけられた「和名」とその由来を解説していきます。昔の日本人は、宝石に対してどんな感性を持って名前をつけたのか…思いを馳せてみてくださいね。
【1月の誕生石】ガーネットは「柘榴石」
ガーネットの和名は「柘榴石(ざくろいし)」。鮮やかな赤色と、粒状の塊になって発掘される原石の様子が、まるで柘榴の実のようだということから、この名前になりました。
【2月の誕生石】アメジストは「紫水晶」
アメジストの和名は「紫水晶(むらさきすいしょう)」です。微量の鉄イオンが含まれることにより紫色に発色した水晶であることから、このように呼ばれています。
【3月の誕生石】アクアマリンは「藍玉」
アクアマリンの和名は「藍玉(らんぎょく)」です。海外でも澄んだ海の色に例えられる美しい青色を、日本では藍色に例えてこの名前で呼ばれるようになりました。
【4月の誕生石】ダイヤモンドは「金剛石」
ダイヤモンドの和名は「金剛石」。金剛とは元々仏教用語で、「最もかたくやぶれないもの」の意味を持っています。その言葉がダイヤモンドの硬さを示すものとして、そのまま和名となりました。
【5月の誕生石】エメラルドは「翠玉」
エメラルドの和名は「翠玉(すいぎょく)」です。カワセミの羽のような美しい緑色をしている宝石であることから、この名前がつけられたと考えられます。
【6月の誕生石】ムーンストーンは「月長石」
ムーンストーンの和名は「月長石(げっちょうせき)」。ムーンストーンは長石と呼ばれる鉱石群に属しており、角度や光の加減により月光のような光を見せることから、月のような長石ということでこの名がつきました。
【7月の誕生石】ルビーは「紅石」
ルビーの和名は「紅玉(こうぎょく)」です。赤い宝石として代表的なルビー。日本でも鮮やかな赤色を示す「紅」の字を当ててルビーの和名としました。
【8月の誕生石】ペリドットは「橄欖石」
ペリドットの和名は「橄欖石(かんらんせき)」。橄欖(かんらん)とはオリーブのこと。オリーブ色を持つ「橄欖岩」に含まれる宝石ということから、この名前になりました。
【9月の誕生石】サファイアは「蒼玉」
サファイアの和名は「蒼玉(せいぎょく)」です。深く鮮やかな青色を持つ代表的な宝石として、「蒼」の文字が使われた名前になっています。
【10月の誕生石】オパールは「蛋白石」
オパールの和名は「蛋白石(たんぱくせき)」です。名前の由来になったのは七色に輝く遊色効果のないコモンオパールだと言われており、宝石の色が卵の白身に似ていたことからこの名前がつけられたと言われています。
【11月の誕生石】トパーズは「黄玉」
トパーズの和名は「黄玉(おうぎょく)」。様々な色が存在する宝石トパーズですが、日本人が名付けるうえで参考にしたのは黄色のトパーズだったのです。
【12月の誕生石】ラピスラズリは「瑠璃」
ラピスラズリは和名で「瑠璃(るり)」です。古来は「吠瑠璃(べいるり)」と言われ、仏教では七宝のひとつとされました。日本の歴史的にも価値の高い宝石とされています。
宝石の「和名」 :その他編
ローズクォーツは「紅水晶」
ローズクォーツの和名は「紅水晶(べにすいしょう)」です。「紫水晶」と呼ばれるアメジストと同様、水晶に含まれる成分によりピンク色に発色したものを言います。
オニキスは「黒瑪瑙」
オニキスの和名は「黒瑪瑙(くろめのう)」です。文字通り真っ黒な色をした瑪瑙であることからこの名前がついています。
代表的な宝石に付けられた「和名」を紹介してきました。由来を見てみれば、なるほどと納得するものばかりでしたね。日本人は宝石の色や美しさ、特徴を端的に表して「和名」を付けました。この別名を知っていれば、宝石通に一歩近づいたと言えるかもしれませんよ。